行列についてあれこれメモ/行列は何の役に立つか

アリの行列

フェロモン

 アリがなぜ行列をつくるのか知っている人も多いと思いますが、身近な行列ということで、「アリの行列」の話です。
 アリの行列が「フェロモン」という化学物質によってライン状になっているというのは、広く知られています。フェロモンは臭いを伴った化学物質で、それを使った情報交換は「ケミカル・コミュニケーション」と呼ばれているのですが、昆虫だけでなくカビからほ乳類いたる様々な生き物がケミカル・コミュニケーションをしているのだとか。しかし、アリやハチのような社会性昆虫は、特にフェロモン機能が発達していて、フェロモンによって社会が統制されていると言っても過言ではないようです。特にアリには「道しるべフェロモン」という機能があり、これがアリに行列を作らせているわけです。


 例えば、餌を見つけた1匹のアリがフェロモンを地面につけながら巣に戻ると、仲間のアリは触覚を使い、これを頼りに餌を見つけることができます。しかし、「道しるべフェロモン」は揮発性の高い物質で、餌がなくなれば速やかに消える性質があります。そこで、アリの道しるべフェロモンの研究もされていて、京都工芸繊維大学の山岡亮平教授によると、単に道しるべフェロモンのみを地面につけているだけではなく、あらかじめある種の炭化水素を塗り付けておき、その上にフェロモンを分泌するそうです。炭化水素が「ワックス」のような役割を果たしているわけです。この炭化水素の組成はアリの巣ごとに異なっていて、アリが自分の巣を見分ける役割を果たしているのだとか。


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 個性的な行列スタイルのアリもいます。頭の上に、緑の葉っぱをのせて行進する「葉切りアリ(リーフカッターアンツとかパラソルアンツとも)」の様子は、何だかパレードみたいですが、ドナルド・カルロス・ピューティ氏は、「これは決して復活祭のパレードのようなものではない」と述べています。このアリは、キノコを栽培するとても珍しいアリで、キノコ栽培に必要な葉っぱを頭の上にのっけているんですね。同氏は、「おそらく動物界では人類やある種のシロアリを除けば唯一の農夫」と述べています。それから、東南アジアに住むハキリアリのフェロモン力も凄くて、この化合物が0.33mgあれば一匹のアリに地球一周させることができる計算になるそうです。


 戦闘的な行軍パレードのアリは、その名の通りグンタイアリ(アーミー・アンツ)。このアリは集団的な狩猟性を特徴としていて、昆虫やトカゲ、鳥、家畜まで出会ったものは手当たり次第に何でも襲うと言われています。定住せず、軍隊が野営するするのと同じように、移動しながら集団で獲物を襲うのだそうです。獲物を前にすると扇形に広がるという習性があり、絨毯状襲撃と呼ばれています。
 行列の形態にはいくつかの特長があって、例えば小型・中型の働きアリが行列の中央を歩き、その両サイドを大型の兵隊アリが歩きます。これは歩調合わせのためで、兵隊アリが行列を指導しているわけではないようです。行列のリーダーアリもいません。女王アリはたくさんの働きアリにかつがれるようにして行進しますが、独裁国家の軍事パレードを連想させますね。
 行列のスピードは、バーチェルグンタイアリで毎時最高20m。移動距離は生息地域の条件で異なりますが、1日せいぜい100〜200mしか行進しないという観察結果があります。
 グンタイアリの仲間としては、南米に生息するバーチェルグンタイアリとアジア・アフリカのサスライアリが主に知られていて、1つのコロニーの個体数はバーチェルグンタイアリの場合15万〜70万匹だそうですが、中には数千万匹にも及ぶ巨大コロニーもあるそうです。いずれにしてもこのパレードにだけは遭遇したくないですね。


※地上には約1京(1兆の1万倍)匹のアリがいて、1万2000種のアリの種類が確認されている。

【参考資料】
●『社会生物学』合本版 エドワード・O・ウィルソン 日本語版監修 伊藤嘉昭 新思索社 1999 
●『フェロモンの謎』 WILLIAM C. AGOSTA 木村武二訳 東京化学同人 1995
●『アリはなぜ一列に歩くか』 山岡亮平 大修館書店 1995
●『動物界の驚異と神秘』(リーダーズダイジェスト)1966
●『ナショナルジオグラフィック 日本語版』 2006年10月号
●『ありとあらゆるアリの話』 久保田政雄 http://ant.edb.miyakyo-u.ac.jp/BJ/antStory/AAAnt4.html

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