行列についてあれこれメモ/行列は何の役に立つか

象のパレード 博多編

象が歩いてPR

 江戸時代の象パレード「享保の象」のついでに、現代版の象パレードです。
 ディプレイデザインは、非日常空間を演出する役割が大きいと思うのですが、その中でもパレードは極めて非日常的な世界です。だから、象さんが街中を歩くなんて普通あり得ないので、非日常効果は抜群。でも、そう簡単に道路使用許可で出るとは思えませんね。


西日本新聞/2003.12.28ところが、象が街中を歩いてPRしていた時代もあったのです。例えば、1954年(昭和29年)の12月31日の福岡市、博多区祇園町のあたり(かつて渕上デパートやダイエー渕上店があったところ)でアニマルパレード。象1頭と子象5頭、その他キリンやラクダもいますね。見物の子供達がその後をついていったり歩道から降りて見物したり車を止めて見たり、警察官が交通整理してますがのんびりした時代だったんですね。これは、「世界動物博覧会」開催のPRが目的のようですが、福岡に到着した動物たちを会場の東公園まで移動させるのが最大の目的でした。今では動物移動専門のトラックがありますので、こんな光景を目にすることもないでしょうね。


 その一方、海外での象のパレードは、インドの「ペラヘラ祭り」を筆頭にいろいろ確認できます。その中で象のPRパレードをあげるなら、アメリカのサーカス団・「リングリングブラザーズ&バーナム&ベイリーサーカス」の象のパレード(「Ringling Bros And Barnum & Bailey Circus Parade」)。こちらも駅からサーカス会場までの移動パレードですが、ニューヨークのそれは恒例となっていて、毎年楽しみにしている人もいるようです。毎年3月下旬の深夜に行われ、ルートはクィーンズ駅からサーカス会場のマディソン・スクエア・ガーデン(※1)までです。このサーカス団によるアニマルパレードは、サンディエゴなどアメリカの他の州でも見られますが、ニューヨークほどの盛り上がりはないようです。象のパレードは、自然に近い場所より、マンハッタンという高密度な都市の中でやる方が効果的なんでしょうね。また最近は、動物愛護団体からの抗議もあるようで、そのうち見られなくなるかもしれません。(※2)


 「リングリングブラザーズ&バーナム&ベイリーサーカス」ですが、その宣伝方法が実に巧みで、開催場所でパレードしながら街頭宣伝するという派手な方法を始めたことで知られています。サーカスパレードは、1837年から始まったそうで、様々な動物達や芸人達が派手な馬車(ワゴン)を連ね、「汽笛オルガン」を鳴らしながら市中を回るので、それは目立ちますよね。宣伝馬車(バンドワゴン)も超華麗なデザイン。「Two hemisphere Wagon(東西両世界)」という名で片面は東洋、片面は西洋を表現した巨大かつ華麗なデザイン。40頭の馬車が引いていたそうです。サーカスの歴史に名を残すこの「Two hemisphere Wagon」は、現在、ウェスコンシン州のサーカスワールドに展示されています。こちらの「サーカス・ワゴン・コレクション」から見ることができます。しかし、サーカス団の移動はワゴンから鉄道に変わり、規制も多くなった現代、こうしたサーカスパレードも昔の話になってしまいました。「リングリングブラザーズ&バーナム&ベイリーサーカス」の象のパレードは、これままで構築してきたサーカスパレードへの抵抗なのでしょうか。それとも、象の運搬って本当に難しいのでしょうか。(※3)

(※1)1874年に、今のマディソン・スクエア・ガーデンの前身にあたる「バーナムのローマ式大曲馬場」がつくられている。


(※2)元団員や動物愛護活動団体の米国動物虐待防止協会(American Society for the Prevention of Cruelty to Animals、ASPCA)や動物福祉協会(Animal Welfare Institute、AWI)が、リングリング・サーカスがショーに出演させているアジアゾウに虐待を加えているとして、同サーカス団と親会社のフェルド・エンターテインメント(Feld Entertainment)を訴えている。2009年2月5日から裁判。反則金27万ドル(約2100万円)を支払うことで同意。


(※3)動物の移動について
昭和50年代にキグレサーカスにいたころの体験記を書いた『サーカス放浪記』(宇根元由紀著)によると、サーカス団が公演地に移動することを、「場越し」や「乗り込み」とか言っていたそうです。「場越し」とは「公演地が変わる毎にくり返されるこの大がかりな引っ越し」を意味し、「乗り込み」とは次ぎの公演地に関係者が入ることを意味します。場越しでは、象などの動物や会場づくりに使うさまざまな荷物などを30台分以上のトラックにまとめて引っ越ししたそうで、この時代、象もトラックで運んでいたみたいです。


●『サーカス放浪記』 宇根元由紀著 岩波新書 1988
現代の動物の移動は、高さ調整ができる特殊なコンテナに象やキリンなどを入れ、超低床特殊トレーラーで輸送しているようです。
このトレーラーはコンテナに衝撃が伝わらないような特殊な仕組みになっているとのこと。また、首の長いキリンは、首を伸ばしたままではなく、高さ約3mの箱の中に曲げる入れるのだそうです。
●『木下サーカスこども広場/こどもQ&A』
●『TOKYO ZOO NET 』

【参考資料】
●西日本新聞/2003.12.28
●リングリングブラザーズ&バーナム&ベイリーサーカス こちらから
●アメリカのサーカスについては「サーカスが来た!―アメリカ大衆文化覚書」亀井俊介著が面白いです。

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